※本記事はライターの陽菜ひよ子氏に取材・執筆いただきました。
2026年1月7日。側島製罐の次なる一歩を刻む「みんなで経営会議2026」が開催されました。
開催のおよそ1カ月前、12月初旬のことです。筆者のもとに、代表の石川さんから一通のメッセージが届きました。「今回の会議は、これまでより格段にレベルアップして開催したいと考えています。そのレポートをお願いできないでしょうか」
思いがけない依頼に、正直、言葉を失いました。石川さんの周囲には、優れた書き手が数多くいるはずです。それでもなお、筆者に声をかけてくださった。その事実に驚きつつ、込み上げる光栄な気持ちとともに、「ぜひお引き受けします」と返事をしました。
さらに圧倒されたのは、会議前に届いた「ト書き」です。タイムスケジュールから司会進行まで、10分~15分単位でA4用紙9ページにわたってしっかりと練り込まれていたのです。
そこから伝わってきたのは、「格段にレベルアップさせる」という言葉が決して誇張ではない、並々ならぬ本気度でした。
当日はそのト書きをもとにした「プログラム」が配布されました。

当日の社内は、元カメラマンの社員が撮影に挑み、動画撮影のプロも待機していました。さらに、外部の方が受付を担当し、ドレスアップした社員が司会を務めるなど、まるで公開収録のような緊張感と熱気に包まれていました。
プロローグ:託された「宝物」の記録
この日の会議を貫いていたのは、側島製罐が掲げるMVVのVision「宝物を託される人になろう」です。会議は「この言葉にどう向き合うのか」を全員で考える場として設計されていました。

筆者が同社の取材を始めて3年。大切なこの会議のレポートを託していただいたのは、これまでの変遷を知る外部ライターの視点で、今の自分たちの嘘偽りのない等身大の姿を描いてほしいという石川さんの想いがあったからだと受け止めています。筆者は今、まさに一つの「宝物」を託された思いで、このレポートを執筆しています。
「中小企業の教科書」になりうる「学びある一日」
会議中盤に登壇するスペシャルゲストは、石川さんの入社後、側島製罐を陰ながら支えてこられた方々です。この日は登壇だけでなく、受付対応や舞台運営も担当。ゲストの方によると「今日は登壇で呼ばれたんですけど、面白そうだったんで社員を連れて来ることになって、ついでにお手伝いすることになったんです」とのこと。
そうなのです。筆者も記録係としての役割の範囲を超えて「何かここでとんでもなくおもしろいことが起こるのではないか」という期待が高まり、ワクワクを抑えきれませんでした。
そして、会議が進むにつれ、筆者はある驚きを覚えました。
ここで行われているのは、単なる情報共有ではありませんでした。「中小企業が自分たちの存在意義にどう向き合い、どう変わっていくのか」を具体的に示すプロセスそのものだったのです。これは、特定の企業の内部会議でありながら、同時に「中小企業の教科書」になりうる内容ではないか――筆者はそう感じました。

そして、この日の経営会議は、会社の未来という「宝物」をどのように受け取り、次につないでいくのかを、全員で確認する場でもありました。
創業120年近い歴史の重みを背負いながら、今まさに「そばじま2.0」から「そばじま3.0」という未知のステージへと踏み出そうとする当日の模様を振り返ります。
テーマ1:決算はみんなの通知表!そばじま2025年⼤総括!
「いい会社にするために投資をする」という信念
プログラムの幕開けはドレスアップしたお二方の司会で始まり、2025年度の決算報告からスタートしました。

一般的に「決算」といえば、無機質な数字が並ぶ堅苦しいイメージがありますが、経営会議ではそれを「みんなの一年間の通知表」と定義しました。
一人ひとりの仕事の積み重ねが、「どれだけ稼ぎ、どう使い、どれだけ残ったか」という結果として表れるのです。その言葉からは、数字を代表や一部の誰かのものではなく、メンバー全員が自分の仕事の成果として分かち合う「手応え」にしたいという想いが感じられました。
発表された2025年度の通知表は、売上8.1億円(前年比110%)、利益は前年比125%見込みで、と売上・利益ともに「成績アップ」という結果となりました。

「困難な局面もあったけれど、みんなの頑張りのおかげです。ありがとうございます」と、壇上から感謝を伝える経営管理チームの山口さんの言葉に、会場には安堵と誇らしさが混じり合ったような温かい空気が流れます。
しかし、筆者が最も「側島製罐らしさ」を感じたのは、その利益の「使い道」についての説明でした。
同社は、利益が出たから投資をするのではありません。「いい会社にするために投資をし続ける」という信念のもと、利益が出る前から最新のプレス機や金型の導入だけでなく、仲間の給与や賞与に計1,000万円以上を上乗せするという”投資”をしていました。
「たくさんお金を使ったので、現在はお金がない状態です」と山口さん。それは決して後ろ向きな言葉ではありません。売上を増やし、再び利益を生み出すことで、もっともっと新しいことに挑戦できる。そんな未来への健全な欲求が、言葉の端々に滲んでいました。
「誰も超えたことのない壁」をまっすぐに貫く
続くトークセッションでは、社員の方から石川さんへ、経営に関する率直な質問が投げかけられました。「今後の規模感はどうなるのか?」という問いに対し、石川さんは「近々、売上10億・社員50人のラインを目指したい」と語ります。
それは単なる膨張のような規模の拡大ではありません。側島製罐が目指すのは、正しく投資し、みんなで投資に見合うように価値を磨き、結果としてお客様に心から必要とされる「地に足の着いた成長」なのです。
印象的だったのは、「経営の実務をどう学んだのか」という質問への答えです。石川さんは、この6年間で600冊もの本を読破してきたといいます。とはいえ、石川さんは「本に書いてあることは、多くの人が実践していることの最大公約数でしかない」と言い切りました。
知識を得た上で、それを鵜呑みにせず一旦学びを捨てて、自分の信じる「正しさ」を貫く。その先にぶつかる「誰も超えたことのない壁」を突き破ったとき、「本当の学び」がある、といいます。

「世の中にないものを生み出すのがメーカーの使命ですが、仕事のやり方も同じです。もともと側島製罐にいた人たちが、正しくありたい、嘘をつきたくないという人たちだった。だから僕もそこに乗っかって、自分の思う『正しさ』を貫こうと思いました。これは僕個人のアイデンティティではなく、この会社で100年以上続くスピリッツなのだと思います」
「まっすぐやろう」――。同社のValuesのひとつであるこの言葉は、単なる精神論ではなく、メーカーとして正しい道を切り拓き続けていていくという、側島製罐の静かな、しかし強い覚悟を再確認させるものでした。
テーマ2:働いて働いて働いてまいります!クッキー缶の次の手とは?缶の業界はどうなるのか?
会議の熱気が一段と高まる中、話題は「市場動向」という、よりシビアな現実へと移りました。包材業界全体を襲うコスト増という逆風。その中で、側島製罐が向き合っているのは「お客様の二極化」という現象です。
コスト優先で缶から紙箱へシフトする層と、逆にデザインや高級感といった「付加価値」を求めて缶を指名する層。この分水嶺において、側島製罐は明確な生存戦略を描いていました。
時代の逆風を「らしさ」で切り拓く
驚くべきは、顧客数の推移です。2023年の357件から、2025年には421件へと着実に増加しています。しかし、一社あたりの売上単価は減少傾向にありました。これは、「町のケーキ屋さん」などの「小口・多品種・短納期」というニーズが増えていることを意味します。
営業メンバーは、この現状を冷静に分析します。「既製品の需要は増え、多様化しています。しかしその分、現場はスピード感と多様な提案に忙殺されている。この壁を打破する鍵は、効率化の徹底と、そばじまにしかできない『提案力』にあります」
ここで語られた「効率化」とは、外部委託していた業務を自社で完結させる「内製化」や、一つの金型で多品目を作れる高効率な製造ラインの構築などを指します。「提案力」とは、アイデアを伝える力のことです。まさに「ものづくり2.0」から「3.0」へ、筋肉質な組織へと進化しようとする意志が伝わってきました。

選ばれるシンプルな理由

トークセッションでは、営業チームの生々しい声も飛び交いました。石川さんから営業チームに問いかけられたのは「多種多様な製品がある中で、なぜ側島製罐はお客様から選んでいただけるのか?」という質問。
現場から挙がった答えは、驚くほどシンプルで、かつ強力なものでした。
「一般的には1週間かける見積もりを、うちは早ければその日のうちに送ります。この『レスポンスの速さ』こそが、信頼の第一歩だと考えています」
さらに、単に言われたものを作るのではなく、最新の業界情報を踏まえて3パターンほど企画する力を、今後はさらに鍛えていきたい、と話します。スピードと企画力を兼ね備えた「ハイブリッド型」の営業スタイルこそが、他社との差別化につながるからです。
筆者はこのセクションを聴きながら、側島製罐の強さは「人の熱量」と「顧客への誠実さ」の掛け算にあるのだと再認識しました。
お客様に寄り添い、魅力を引き出し、共に価値を創り上げる。今回側島製罐が掲げている「そばじま 3.0」の輪郭が、少しずつ、しかし確実に、現場の言葉を通じて形作られていくのを感じました。
テーマ3:“働きやすさ”とは何だろう?そばじまで長く仕事を続けられる理由
「働きやすさ」の正体
「まっすぐやろう」という精神は、現場の「働きやすさ」という形でも具現化されていました。トークセッションでは、現場のメンバーから次々と驚くほど率直な「本音」が語られたのです。

数年前までは離職率の高さが課題だったといいますが、今、側島製罐の空気は明らかに変わっています。「昔とは変わった部分があるから続けていける」そう語る人もいます。
多くの人が強調したのが、チームワークのよさでした。「子どもの急な発病で5日間休んでも、チームが快くカバーしてくれました。休み明けも気まずくなく、温かく迎えてもらえる。だからこそ、休んだ分も頑張ろうと思えるんです」

この言葉に象徴されるように、ここでは「お互いさま」という温もりが、単なるスローガンではなく日常の行動として息づいています。
また、ITツールの活用や環境改善も、社員の負担を減らす大きな役割を果たしていました。「有休申請はスマホで完結し、工場のラインには椅子が導入されました。さらにSlackを使えば、何かあったときに営業の人がすぐに工場へ駆けつけてくれます」
こうした「小さな改善」の積み重ねは、まさにValuesにある「笑顔に全力でコミットしよう」の体現に他なりません。ストレスなく仕事に専念できる環境が、メンバーの自発性を引き出しているのを感じました。
「もっといい会社にするために何ができるか?」という問に対しては、「検査の基準を簡素化し、誰が検査をしても同じ結果になるようにしたい」という、かなりハードルの高い答えもありました。
どんなに高い目標も、いつの間にか乗り越えてしまう「バネ」のような「柔らかな強さ」が側島製罐には備わっているのを感じます。
テーマ4: “そばじまの語り部たち!”おじいちゃんたちが覚えてる昔の側島製罐の姿
歴史を超える価値をつくろう
会場に深い味わいをもたらしたのは、長年側島製罐を支えてきたベテラン勢による昔語りでした。

たかやさんの祖父・佐七さんの時代、そして父・博章さんの時代。そこには今の「働きやすさ」からは想像もつかない、泥臭く、しかし熱い記憶が刻まれていました。
「深夜の2時まで残業は当たり前」「ある大手企業の試作では、デザインが髪の毛一本分ずれただけでNG。拡大鏡で確認しながら朝まで追い込まれた」笑いを交えながら語られるその過酷なエピソードは、今の側島製罐の土台を築いてきた「職人の矜持」そのものでした。
デジタル化が進む現代においても、彼らは「必要最低限を覚えればなんとかなる」と、新しい技術に食らいついています。「なぜ頑張れるのか?」という問いに、「あまり深く考えたことはない。でも、なんか頑張らんと」と語る姿は、まさにValues「歴史を超える価値をつくろう」とする側島製罐の強靭な根っこを見ているようでした。
若い世代が変革に挑めるのは、この揺るぎない「根っこ」があるからこそ。会場を包む笑いと拍手の中に、世代を超えた深い敬意が通い合っていました。
テーマ5:中小企業のコ・デザイン(Co-DESIGN)
会議が中盤に差し掛かった頃、壇上に一人のスペシャルゲストが招かれました。株式会社エスケイワードの取締役、江口伸行さんです。

実は、エスケイワードさんは単なるゲストではありません。
同社は、中部地区では比較的大きなデザイン会社です。企業の周年や経営者が変わるタイミングで「どのような価値を提供するか」を再定義し、MVVやロゴ制作の支援などをおこなっています。
5年前、石川さんが「経営には理念が必要だ」と確信した際、共に悩み、対話を重ねて現在の側島製罐の魂ともいえる「MVV」を一緒に作り上げた伴走者なのです。
デザインをみんなのものに── そばじま3.0への思考の種
江口さんが語ったのは、「デザイン」という言葉の真意でした。デザインやセンスとは縁遠いと感じている側島製罐の社員を前に、江口さんの口から出たのは意外な言葉でした。
「皆さんも日々、デザインをしているんです」
江口さんによると、デザインには、見た目の美しさを整える「design」と、より広い意味で課題を解決し、理想の姿を描く「DESIGN」の二つがあるとのこと。そして「デザイナーや専門家以外の人も一緒にデザインすること」を「コ・デザイン」と呼ぶのだそう。

MVVは「どんな価値観」や「どこを目指すか」を体現した「自社らしさ」を軸にしてつくると、社員全員が同じ方向を見る文化が生まれます。
企業がそうした「自社らしさ」を目指す取り組みは「デザイン経営」とも呼ばれます。
MVVは本当に必要か?
続くトークセッションでは、江口さんと石川さんが登壇。
石川さんは「僕が入社したときには、経営理念がありませんでした。『早く安く作る』だけが使命という会社だったんですね。江口さんと出会ってデザイン経営の考え方を知り、視界が開けたんです」と振り返ります。

最初に上がったセッションの命題は「MVVは本当に必要なのか?」という本質的な問い。江口さんの答えは明快でした。 「一人で全てを決めるなら必要ありません。けれど、みんなで助け合って一つの方向を目指すとき、MVVは『折れない軸』になります」
江口さんの長年の経験によると、MVVがある場合とない場合とでは、結果的に数字(売上)にも違いが出るのだそう。「MVVを使って発信していた部署は、実際に売上が上がりました。『同じ方向に向けて活動できる』ことが数字に繋がっているのだと思います」
「センス」という名のまなざし
特に印象的だったのは、「センスを磨くにはどうすればいいか?」という話題です。会場へ向けた「センスよくなりたい?」の質問に、多くの人が手を挙げた一方で、「自分はセンスがあると思う人!」にはパラパラとしか挙がりません。
江口さんは「センスは知識の集積であり、どれだけ多くのものに興味を持ち、深くまなざしを向けてきたか。その総量で決まります」と説きました。
見つめるだけでなく、常に「なぜこれはいいのか?」「なぜよくないのか?」を言語化し、自分に問い続けること。その積み重ねが、お客様への提案力やものづくりの精度を左右する「クリエイティブ・コンフィデンス(創造性への自信)」につながるのだといいます。
では、どういうものを見ればいいのでしょうか。その問いにも江口さんは軽快に答えます。「みなさんは環境に恵まれています。ここの空間にはいいものがちゃんと隠れています」
側島製罐の工場には毎日色んな会社の方が企画された優れたデザインが施された缶が流れています。オフィスは「日経ニューオフィス賞」を受賞するほど美しく整えられ、カフェコーナーには世界的に有名なデザインのペンダントライトも飾られています。それは社員の皆さんに「本物に触れてほしい」という石川さんの想いからなのですが、側島製罐は優れたデザインに触れることができる素晴らしい環境だと江口さんは言います。

側島製罐本社ビル2階のカフェコーナー。アルヴァ・アアルト氏デザインのペンダントライト・A330S(通称:ゴールデンベル)(撮影:宮田雄平)
よいデザインとは「やさしさ」である
「よいデザイン」とは「使う相手が明確であること」さらにいえば「誰かの課題を解決するために考え抜かれたものです」と江口さん。
それは歩道の傾斜一つにも宿っている、といいます。本来は障害のある方のために配慮されたものですが、子どもや高齢者、足を怪我した人などにもやさしい設計になっているのです。
「誰かのためにつくられたものが、思いもよらない別の誰かを助けている。それがよいデザインだといっていいと思います」
デザインというと、私たちはつい「カッコいいもの」と捉えがちだけれど、本当に良いデザインとは「人にやさしいもの」なのですね。
江口さんのお話は、オフィスや製造現場で働く一人ひとりの仕事もまた、誰かの課題を解決する「デザイン」そのものであるという誇りを、メンバー一人ひとりの心に植え付けていきました。
テーマ6:2026年問題、減少する配送先。物流のぼくたちはどう生きるか
2026年問題を、現場の「知恵」で乗り越える

製造現場がどれほど素晴らしい製品を作っても、それをお客様のもとへ無事に届けなければ価値は完結しません。物流管理課のプレゼンでは、深刻な人手不足や物流コストの上昇が懸念される「2026年問題」を前に、メンバーが自ら進めてきた劇的な改善の数々が報告されました。
物流チームが取り組んできたのは、徹底した「動線の最適化」と「情報の共有」です。
倉庫内のレイアウトを見直し、出荷頻度の高い荷物を手前に配置して歩数を減らす。さらに工場にモニターを設置し、事務所に戻らなくても配送予定や在庫状況をリアルタイムで確認できるよう、「見える化」を推進する。こうした仕組みづくりは、誰かに指示されたからではなく、自分たちの仕事をより良くしたいという自発的な想いから生まれたものです。
中でも印象的だったのは、「Sクリーン」と名付けられた活動です。リーダーのSさんを中心に、物の定位置を決め、遵守する。この地道な活動の積み重ねが、今の物流チームの誇りとなっていました。
「缶はデリケート」というプロの矜持
トークセッションで語られた「自社便の価値」には、物流の本質が詰まっていました。かつて7人体制だった物流チームも、現在は3名。長距離配送から近隣中心へとスタイルも変わりました。
効率だけを追い求めるなら他社便に委託するという選択肢もある中で、側島製罐は「自分たちで運ぶこと」にこだわり続けています。
「缶は非常にデリケートな製品です。ちょっとした衝撃で凹んでしまう。運送のプロであっても、中身の繊細さを知らない人が運べば、どうしても扱いは雑になりがちです」
自社の製品がどれほど大切に作られたかを知っている自分たちが、直接お客様の顔を見て届ける。そのフットワークの軽さと「安心感」こそが、お客様との信頼関係を築く強力な武器になっているのです。
「自社便で唯一怖いのは事故。でも、信頼関係を築くためには直接手渡すことが大事なんです」
物流を単なる「運び賃」というコストで捉えるのではなく、「顧客体験」の一部として捉え直す。そこには、効率化を追求しながらも、製品への愛を忘れない物流メンバーの熱いプロ意識がありました。
テーマ7:転職者が本音で語る!ほかの会社とそばじまとの違いとは!?
多様なバックグラウンドが混ざり合う、そばじまという「選択」
現在の側島製罐を語る上で欠かせないのが、多様な経歴を持つメンバーの存在です。全社員43名のうち、実に33名が中途採用。洋菓子製造、カメラマン、税理士事務所など、その前職は驚くほどバラエティに富んでいます。このセクションでは、6名の転職者が登壇し、外の世界を知るからこそ見える「側島製罐のリアル」が語られました。

「当たり前」という名の宝物
転職者の皆さんが口を揃えて語ったのは、人間関係の温かさと心理的安全性の高さでした。
特に印象的だったのは、5社目の職場としてここを選んだ方のお話です。「前職では、朝いちばんに上司の機嫌を伺うことから一日が始まり、挨拶すら返ってこないこともありました。でも、そばじまではみんなが明るく挨拶を交わす。それは決して『当たり前』のことではなく、とても幸せなことなんです」と。
また側島製罐を「選んでくれるお客様」の存在を理由の一つとして挙げた方もいました。
不毛な人間関係から解放され、協力的な仲間に囲まれ、「お客様に選ばれる」会社で働ける。そんな純粋な誇りが、Valuesの「高め合うために分かち合おう」を支える土壌になっているのです。
「自由を乗りこなす」という、新たな挑戦
しかし、側島製罐での仕事は決して「楽」ではありません。
側島製罐は、「中小企業型ティール組織(上下関係のないフラットな組織)」を掲げる企業です。側島製罐では社員に対し「自由にやっていいよ」と背中を押しますが、その裏側には「自由と責任」という厳しい側面も存在します。
登壇者の一人は、「トップダウンの環境に慣れていた自分にとって、急に自由を渡されるのはハードルの高いことでした。自由を乗りこなすには、スキルが必要なのだと気づかされました」と率直な思いを語りました。
けれど、そんな人をも救ってくれるのが、「失敗を受け入れる」土壌です。
失敗を責めず、「100回失敗しても101回目で成功すればいい」と挑戦を促す文化。そもそも”失敗”という考え方すらもなく、全部挑戦のプロセスだと認めてもらえる。その中で、指示を待つのではなく、自ら考えて行動できることが増えてきたといいます。
転職者の皆さんは、試行錯誤を繰り返しながら、側島製罐が掲げる中小企業型ティール組織の体現者へと成長しようとしていました。
転職者のパートでは最後に「側島製罐に転職して後悔はありません!」という力強いメッセージが示されました。自分の間違いや失敗を否定されるのではなく、「ステップアップのために」建設的な対話が交わされるこの場所で、彼らはこれまでにない手応えを得ている様子がうかがえました。
テーマ8:Mottoワークショップ
ワークショップで見つめた、自分の「現在地」
会議の終盤、会場全体で「Mottoワークショップ」が行われました。これは、自分自身の人生や仕事をより良くするために、Visionである「宝物を託される人になろう」を自分事として捉え直す時間です。

印象的だったのは、Mottoのメンバーの中島さんが例に挙げたスターバックスコーヒーのホスピタリティの話です。
スターバックスはただコーヒーを提供するだけでなく、コーヒーを飲むときの「体験」「経験」に重きを置いています。
スターバックスでは全国どの店舗でも同様に、従業員が自分の仕事に誇りを持ち、「人々の心を豊かにする」というミッションを体現できているのはなぜでしょうか。それは、一人ひとりが「働く意味」や「誇り」を見出せるように、組織が働く環境を大切にしているからだといいます。スターバックスは「人」を変えようとせず、「働く環境」を整えるのです。
ワークショップでは、グループごとに「今の側島製罐は100点満点中、何点か?」という鋭い問いが投げかけられました。
「100点」と即答するメンバーもいれば、現状に満足せず「50点」「49点」と厳しくつけるメンバーも。しかし、あくまでもこれは「現在地」。大切なのは点数そのものではなく、その「差」をどう埋めていくかという「未来」の話です。
「宝物を託される」自分を作るもの
次の問いである「宝物を託される状態とは?」「足りないものは何か?」についてはグループで話し合って発表。その結果、「宝物を託されるとは『信頼と安心』があること」「足りないのは個人の積極性や、組織としての団結力ではないか」といった答えが導き出されました。
グループ発表を通じて、一つの結論にたどり着きました。
「メンバー一人ひとりの日々の『小さな積み重ね』こそが、誰かから宝物を託される自分を作るのだ」
現在地を正しく認識し、理想とのギャップを埋めようとする真摯な眼差しと小さな積み重ねこそが、次なるステージ「3.0」への原動力になる。その確信を、会場の誰もが共有した時間となりました。
テーマ9:はじめての新卒採用―若手でも若手の採用は難しい!
未来の仲間を自らの手で ── はじめての新卒採用への挑戦
会議の終盤、話題は「次世代へのバトン」へと移りました。現在、側島製罐が挑んでいるのは、同社にとって初となる本格的な新卒採用です。
若手メンバーを中心とした採用チームは、一宮から名古屋まで15校もの高校を回りました。しかし、そこで直面したのは、地方の製造業が直面する厳しい現実でした。
工業高校における求人倍率は15倍以上。名だたる大企業がひしめく中で、まだ実績の少ない中小企業が若者の目に留まるのは容易ではありません。「トヨタなどの大手へ流れてしまう」「学校と企業の古いパイプが根強い」といった課題が次々と報告されました。
若手が若手を採用、そばじまならではの戦略
しかし、ここで引き下がらないのが「そばじま流」です。トークセッションでは、若手メンバーから「自分たちの言葉」で未来の仲間にアプローチするための、柔軟で熱いアイデアが飛び出しました。
「TikTokを使って、自分たちの働き方やルーティンをありのまま発信してみてはどうか」
「高校での説明会では、利点ばかりではなく、今の自分たちの課題も正直に話したい。その誠実さこそが信頼に繋がるはず」

印象的だったのは、若手メンバーが「自分たちに後輩ができること」を自分事として切実に捉えている姿でした。「おじいちゃんたちが元気なうちに、その技術を受け継ぐ後輩を育てたい」ベテラン勢への敬意と、伝統を絶やしてはならないという責任感。
かつて自分がそうであったように、不安を抱えて社会に出る若者たちに、側島製罐という「居場所」の魅力をどう届けるか。若手が若手をリクルーティングするという試みは、単なる人員確保ではなく、側島製罐という文化を次世代へ繋ぐためのあくなき挑戦なのだと感じました。
テーマ10:そばじまの工場は次のステージへ!魅せる!稼ぐ!誠意を尽くす!そばじま工場3.0
会議の最後を締めくくったのは、側島製罐の心臓部である「工場」の未来を巡るセッションでした。ここでは、かつての「当たり前」を根底から覆そうとする、生みの苦しみと高揚感が入り混じった対話が繰り広げられました。
「指示待ち」から「自ら描く」工場へ ── そばじま工場3.0
登壇したメンバーからは、20年前、10年前の工場の姿が赤裸々に語られました。

「予定にない仕事が次々と割り込み、ただ指示に従ってがむしゃらに数をこなすだけだった」「タイムカードを押した後に検品をすることもあった」……。かつては、気合と根性で乗り切るのが美徳とされていた時代もありました。
しかし今は違います。自分で考えて行動し、それが結果に結びつく楽しさを誰もが実感しています。一方で、理想の「3.0」へ向かうための壁も、より明確に見えてきました。
「2023年に工場へのクレームが重なったとき、私たちは自分たちに『知識』が足りないことに気づかされました。メーカーとして自信を持って品質を語れる状態になっているのか。これこそが、私たちの今後の課題だと考えています」
知識を武器に、未来を「デザイン」する
現在、工場チームは生産データや品質の「見える化」に挑んでいます。具体的には、今まで「その人にしか分からない」という属人的な勘に頼っていた部分を、客観的なデータへと落とし込むことです。

「見つからなくて探す」「わかりにくくて調べる」「何度も教える」、こうした「非効率」をなくすプロセスこそが、工場のみなさんが語る「魅せる工場にする」ということ。お客様に対してもいつでも胸を張れる工場を目指すという意思表明でもあります。
「魅せる工場にしたい。全力で学び、必ずそこへたどり着きたい」熱を帯びた口調で語るメンバーの言葉には、自分たちの技術への誇りと、新しいステージへ駆け上がろうとする覚悟が宿っていました。
かつての「なんとなく、いいもの」を作る段階を終え、論理と感性を研ぎ澄ませた「プロフェッショナルなものづくり集団」へ。そばじま工場3.0は、もうすぐそこまで来ていることを予感させました。
エピローグ:代表取締役のたかやさんスピーチ
3.0の幕開けに寄せて
約4時間にわたる会議の締めくくりに、石川さんが壇上に立ちました。その表情には、この場を共に作り上げた仲間への深い感謝が滲んでいました。

「今回の会議は、僕たちが『次のステージ』へ行くために、絶対に必要だった挑戦です。今までと全く違う挑戦をするからには、まずは自分が率先垂範して示さなければと思い、プロフェッショナリズムの見本を示すという意味で今回の会議を企画しました。とはいえ、かなり大変な試みでみんなにも負担が大きかったと思います。でも、反対の声は一つもなく、みんなが良い会議にしようと臨んでくれたこと、そんなみんなの優しさと信頼関係に救われているし、それは決して当たり前のことではないと思います。」
そう語りながら、司会、照明、カメラ、進行、今回の企画に携わってくれた人たちへの感謝の想いを語りながら最後の言葉を締めくくっていました。プロの力や社員のみなさんの力を借りながらも、その中心で汗をかいたのは紛れもなく石川さんでした。石川さんは、この会議そのものが、側島製罐の未来を予行演習するような「挑戦」であったと振り返ります。
「今日ここで話されたことを、自分事として受け止め、どうすればいいのかを一生懸命考える。その挑戦の中にこそ、3.0へのブレイクスルーがあります」

拍手の中で幕を閉じた「みんなで経営会議2026」。
筆者は会場を後にしながら、側島製罐が掲げる「歴史を超える価値をつくろう」というValuesの響きをかみしめていました。120年もの歴史の重みを誇りに変え、新しい時代に相応しい「缶」の可能性を追求する。その歩みは、もはや一つの企業の成功物語を超え、これからの日本を支える中小企業の一つの参考例になりうると感じます。
社員のみなさんが自らの言葉で熱く語り、まっすぐに進み続ける限り、側島製罐はもっと面白くなる。
3年間見守ってきた一人のライターとして、側島製罐がこれからどんな「宝物」を託され、世界を笑顔にしていくのか。その航海を、これからも心から応援し続けたいと思います。

当日の様子